アザミとフランネル






















記録的な猛暑が続き、さすがに銀座の街でもジャケットを着ている人の数は例年より少なく感じますね。
というより、ショップのスタッフくらいしか着ていません(苦笑)
「今日も暑いですね」という挨拶にも嫌気がさしてきたので、そろそろ秋冬物の事を考えていきましょう
仕上がってくる頃には涼しくなっているといいなぁという気持ちでいるのも、この暑さを乗り切る為には必要かも知れません。

さて、今日の題名は何となく少女漫画のようですが、画像を見る限りかわいい要素はゼロ()
それだけでなく、攻撃的ですらある形状をしたものが写っています!
すでにステッラの店頭で見かけた事がある人も多いか知れませんが、この画像の植物はイタリアで「Cardi(カルディ)」と呼ばれるアザミの一種の実です。

丸い部分の先っちょがカギ爪のようになっていて引っかかるようになっています。
河川敷で遊ぶとパンツにくっついてきたオナモミのゴジラサイズですね。
よく友達同士で投げ合って、ニット(当時はセーターと呼んでいました)ケバケバにされていました()
さてこのゴジラオナモミが一体スーツとなんの関係があるのかというと
実はこのカルディ、秋冬のスーツに非常に関係のあるものなんです
ヒントは、オナモミにひっつかれてケバケバになってしまったニット。

そう!このカルディは冬の起毛系服地の仕上げに使われるのです!
このかぎ爪で織り上げた服地の表面を毛羽立たせて、あの暖かみある起毛感を作り出します。
近年は金属製のワイヤーを使った起毛機がほとんどですが、一部の高級服地では未だにアザミ起毛機が用いられます。
天然素材であるカルディのワイヤーにはない柔らかさが、服地全体を自然な風合いで起毛させるので、優しい雰囲気の起毛感に仕上がります。
まさに、オナモミを引き剥がした時に表面がフワフワっとしてしまうあの感じ
さらに、画像の生地はフランネルの傑作、E.Zegnaの「トロフェオカシミア」
これもアザミで起毛したもの!
それもそのはず。画像のアザミはゼニアからいただいた物なんです!
世界の名だたる有名メーカーがある意味原始的な方法で、手間暇掛けて服地を作っていると思うと、よりそのスーツに愛着が湧いてきますね

そして、起毛服地といえば紡毛糸を用いたものが多いですが、梳毛糸を使った生地を仕上げ工程で起毛させた「セミ・フランネル(セミ・ミルド)と呼ばれる様な素材もあります。
フランネルのウォーム感と梳毛糸の耐久性を兼ね備えたいいとこどりの服地です。
さらに近年のフランネルは、ウェイトも3シーズン服地と変わらないものも多く、着心地は軽くて柔らか
それでいて、見た目のスポーティさと暖かみはバッチリ演出してくれます

クールビズや猛暑の影響で一年の半分はジャケットを着ないという方も多いはず
だからこそ、冬は思いっきりオシャレを楽しみたいものですね!
これからの季節は店頭のどこかにアザミの実も転がっています。
是非、チクチク感を楽しみながら、「こいつがおれのスーツをミルドしているのかぁ」とお楽しみください♪

STAFF

大東 陽 店長
大東 陽

森田 伊織 スタッフ
森田 伊織

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